上京した地方出身者が、東京で最初に驚くことの一つ。それは「街ごとに役割がはっきりと分かれていること」ではないでしょうか。
買い物をするなら新宿や渋谷、サブカルチャーを浴びるなら秋葉原や下北沢、飲み明かすなら歌舞伎町や六本木。東京の人は、その日の目的に合わせて路線図をなぞり、街を使い分けています。
そんな時、ふと東京の友人に聞かれます。「ねえ、青森で言うと渋谷ってどこなの? 歌舞伎町みたいな場所もあるの?」と。
この無邪気な質問に対し、地元を愛する青森出身者ほど回答に詰まり、深い絶望を味わうことになります。なぜなら、東京と地方では「街の構造」が根本的に違うからです。
今回は、東京の有名な街を無理やり青森県に当てはめるとどうなるのか、現実のデータや規模感を踏まえて真剣に考察してみました。地元での就職か、東京へ出るか迷っている方も、働く環境の違いとしてぜひ参考にしてみてください。
歌舞伎町(夜の街)って青森のどこ?
東京を代表する日本最大級の歓楽街、新宿・歌舞伎町。眠らない街として知られるこのエリアを青森で探すなら、候補は3つに絞られます。
津軽地方であれば、弘前市の「鍛冶町(かじまち)」です。お城の近くに位置し、ネオンが輝く細い路地に飲食店やスナックが密集しています。青森市であれば、郷土料理店からキャバクラまでが揃う「本町(ほんちょう)」。そして県南地方であれば、八戸市の「長横町(ながよこちょう)」をはじめとする中心街の横丁エリアでしょう。
【入れるべき画像の内容】 画面の左半分には札束が舞い散るギラギラした大都会のネオン街、右半分には雪に埋もれながらもポツンと赤提灯が灯る哀愁漂う路地裏が合成され、中央に「圧倒的規模の差!」と巨大な赤文字が飛び出している派手な画像。
ここで現実のデータを見てみます。弘前の鍛冶町エリアには、約500店舗以上の飲食店が密集していると言われています。地方都市の歓楽街としては十分に立派な規模です。
しかし、新宿・歌舞伎町周辺の飲食店数は約1,500件(食べログ等調べ)にのぼり、ホストクラブやキャバクラなどの各種店舗を含めると、その数は数千規模に膨れ上がります。
青森県の歓楽街もディープで人情味あふれる魅力がありますが、歌舞伎町のような「すべてを飲み込むような巨大な欲望の渦」とは、やはりスケールが違います。
ここで一つ豆知識ですが、八戸市の中心街には「みろく横丁」や「たぬき小路」など、まるで迷路のように8つもの横丁が張り巡らされています。実は八戸の歓楽街は、東北地方において仙台の国分町に次ぐ規模を持つとも言われており、昭和の時代から映画館や娯楽施設と共に発展してきた歴史があります。
渋谷(若者の中心地)って青森のどこ?
次は、若者が集まる流行の発信地であり、スクランブル交差点で有名な「渋谷」です。
これを青森で探すとなると、非常に迷います。昔であれば、青森駅前の「新町通り」や、八戸の「十三日町(じゅうさんにちまち)」などの商店街がその役割を担っていました。
しかし、現代のリアルな青森の「渋谷」は、街の形をしていません。青森の若者が集まる中心地は、郊外にある「巨大ショッピングモール」だからです。
津軽地方の若者にとっての渋谷は、五所川原市にある「エルムの街ショッピングセンター(通称:エルム)」です。県南地方の若者にとっては、おいらせ町にある「イオンモール下田」がそれに該当します。休日に若者が一番多く集まり、最新のトレンドに触れ、友人と待ち合わせをする場所は、駅前の交差点ではなくモールの巨大な駐車場なのです。
原宿(ファッションの街)って青森のどこ?
クレープを食べ歩き、個性的なファッションを楽しむ街、原宿。竹下通りや表参道のようなエリアは、青森のどこにあるのでしょうか。
結論から言うと、原宿もまた「エルムの街」か「イオンモール下田」の館内にあります。
【入れるべき画像の内容】 見渡す限りの広大な田んぼのど真ん中に、巨大なショッピングモールが要塞のようにそびえ立ち、上空から「ここが私たちの原宿だ!」という黄金の立体文字が突き刺さっているダイナミックな画像。
東京では「渋谷」「原宿」「新宿」と駅ごとに役割が分散していますが、車社会の地方では、すべての都市機能がひとつの巨大な箱(モール)の中に集約されています。1階の食品売り場が「築地」であり、2階のフードコートが「新大久保」であり、アパレルテナントの並びが「原宿」なのです。
東京と地方の街の違いは、この「移動手段」に大きく影響されています。ここでデータを見てみましょう。

大手町(オフィス街)って青森のどこ?
最後に、高層ビルが立ち並び、スーツ姿のビジネスパーソンが行き交う「大手町」を青森で探してみましょう。
機能として近いのは、青森県庁や青森市役所がある「青森市・長島〜新町周辺」です。金融機関の支店や地元企業のオフィスが集まっており、県内では最もビジネスの空気を感じるエリアです。
しかし、大手町と決定的に違うのは「地下鉄から吐き出されるスーツの群れ」が存在しないことです。
先ほどのグラフの通り、青森の通勤は自家用車が基本です。そのため、朝の風景は「駅から歩く人混み」ではなく「駐車場に向かう車の渋滞」になります。ビルとビルを繋ぐ地下街を早歩きで移動するような、東京特有の「オフィス街の熱気」は、地方都市では物理的に生まれにくい構造になっています。
まとめ|東京と青森の違いは「街の大きさ」より「街の使い方」にある
東京の街を青森に当てはめようとすると、規模の違いや「すべてがモールに集約されている」という現実に直面し、少し絶望的な気分になるかもしれません。
しかし、これはどちらが優れているという話ではありません。東京は「電車移動を前提とした、目的別に分散する街」であり、地方は「車移動を前提とした、機能が集約された街」だということです。
都会の満員電車に揺られて専門化された街を楽しむか、車というプライベート空間で快適に移動しながら生活のすべてを巨大モールで完結させるか。「働く場所」を選ぶということは、こうした「空間の使い方の違い」を選ぶことでもあります。
地元に残るか、上京するか。そんな進路に迷ったときは、求人票の給料や職種だけでなく、「自分がどちらの街の構造で生きていきたいか」を想像してみるのも、一つのリアルな判断基準になるはずです。
